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主要な世界市場におけるRoHS要件の導入について

このインサイトページは、メーカーが世界各国のRoHS要件を把握し、異なる市場間で比較を行い、製品のコンプライアンスを支援するための最新のRoHS規制改定情報を入手するのに役立ちます。

Magnifying glass resting on a stack of manila folders and documents

化学物質の影響は、製品のライフサイクル全体を通じて常に重要な懸念事項となっています。電気電子機器(EEE)のメーカーにとって、有害物質の制限は、製品のコンプライアンスおよび市場参入に関する政策枠組みにおいて極めて重な役割を果たしています。人の健康と環境を保護することを目的として、世界中の政府や規制当局は、EEEに含まれる有害物質の濃度を制限するためのさまざまな措置を打ち出しています。

RoHS(Restriction of Hazardous Substances:特定有害物質使用制限)指令は、EEEに特に適用される包括的な法規制であり、通常、EEEに含まれる特定のカテゴリーの有害物質の濃度を制限すること、および/またはそれらの表示を義務付けています。一部の市場では、規制において物質の濃度制限と表示の両方を義務として定めている一方で、製品に含まれる規制対象物質の有無の表示を義務付けるにとどまり、濃度制限に関する要件は設けていない場合もあります。適合を実証する手法も異なります。ほとんどの国や地域では、製造者による自己宣言を採用していますが、認証を義務付けている場合もあります。

本記事では、世界各国のRoHS要件の比較分析を行うとともに、一部の国における最新のRoHS規制動向について、現在進行中のものから施行済みのものまでご紹介します。EU RoHS指令は、世界中の関連法令にて一定の参照をされてきたため、世界各国のRoHS規制を理解するための出発点として、まずEU RoHS指令を取り上げます。最後に、このインサイトページは、EEEメーカーが各市場におけるRoHSの方針の重点をより深く理解し、適合の義務を履行するための指針となるものです。

1.   RoHS要件に基づく規制対象製品の範囲

ほとんどの国や地域では、RoHS要件に基づく規制対象製品の範囲を明確に定義しています。その方法は、あらゆるEEEを網羅する大分類を指定する方法(オープンスコープ)か、HSコードに基づいて特定の製品カテゴリーを列挙する方法のいずれかです。前者の代表例はEUです。EUのRoHS指令は、大型家庭用電化製品、IT・通信機器から医療機器、監視・制御機器に至るまで2、幅広い製品カテゴリーを対象としており、廃電気電子機器に関する指令(WEEE)3と同一のリストを採用しています。また、これらのカテゴリーに含まれないものを対象とする「上記のいずれのカテゴリーにも該当しないその他のEEE」という追加のカテゴリーが設けられています。同様の対象製品の範囲は、中国、アラブ首長国連邦(UAE)、およびトルコやウクライナなど、EU RoHS指令を国内法に組み込んでいる国々でも見られます。中国では、ほぼすべてのEEEが規制対象となり、表示要件が義務付けられている一方で、物質制限要件を満たすべき特定製品からなる別の対象製品リストも公表されています4。最新の発表によると、この制限対象の製品リストは12品目から33品目に拡大されます5。一方、日本、インド、ベトナム、シンガポールについては、対象製品の範囲が限定されており、品目名、説明、または製品分類(HS)コードを確認することで、製造者は自社製品の適用可否を評価することができます。

一般的に、対象製品の範囲は継続的に拡大される傾向にあります。

2025年4月、韓国環境部は「電気電子製品および自動車の資源循環に関する法律」の施行令の改正を発表しました。これに伴い、2026年1月1日より、RoHS要件の対象となるEEEのリストが、現行の中型・大型家電50種類から、ほぼすべての電気電子製品へと拡大されました6。2025年7月、サウジアラビア規格・計量・品質機構(SASO)は、「電気電子機器における有害物質の制限に関する技術規制」の草案を公表し、現在の限定的な製品カテゴリーをオープンスコープへと拡大することを目指しています7

規制対象外の製品として、軍事/セキュリティ機器、大型の据え置き型産業用工具および大型固定設備、輸送手段、ならびに除外製品の一部として特別に設計された構成部品などは、一般的にRoHS規制の対象外となります。 

2.規制対象物質

行政上の負担を軽減し、REACH規則8などの最新のEU政策や法規制との整合性を図るため、EU RoHSでは2011年に規制対象物質が6物質から10物質へと拡大されました。EUの要件に合わせて、その他の主要市場でも、規制対象物質の10物質すべてが順次採用されました。2024年、中国は中国RoHS規格「GB/T 26572-2011 電気電子製品における特定の規制対象物質の濃度制限要件」の改正案を公表し電気電子製品の規制対象物質に4種類のフタル酸エステル類(DEHP、BBP、DBP、DIBP)を追加しました。その後、この自主的な業界規格は強制的な国家規格となり、「SJ/T 11364-2024 電気電子製品における有害物質の使用制限に関する表示要件」と統合されました。強制規格であるGB 26572-2025は、2027年8月1日から施行されます9

日本、インド、ベトナム、シンガポール、サウジアラビアなどの市場では、現時点では依然として6種類の規制対象物質が指定されていますが、少なくともサウジアラビアについては、国際的な要件に合わせるために規制対象物質を拡大する何らかの措置が進行中であると予想されます。

米国には連邦レベルでの規制対象物質に関する規制はありませんが、州レベルの措置は実施されています。例えば、カリフォルニア州は、デバイス(モニタ、テレビ、ノートパソコンなど)を含むブラウン管(CRT)および液晶ディスプレイ(LCD)に特化した要件を承認しました。焦点となる物質は4つの主要カテゴリーに限定されています。

規制対象物質

 

導入市場の例 

 

鉛(0.1%)

水銀(0.1%)

カドミウム(0.01%)

六価クロム(0.1%) 

 

カリフォルニア10 

 

鉛(0.1%)

水銀(0.1%)

カドミウム(0.01%)

六価クロム(0.1%)

ポリ臭化ビフェニル(PBB)(0.1%)

ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)(0.1%)

日本、インド、ベトナム、シンガポール、サウジアラビア11 

 

鉛(0.1%)

水銀(0.1%)

カドミウム(0.01%)

六価クロム(0.1%)

ポリ臭化ビフェニル(PBB)(0.1%)

ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)(0.1%)

フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)(0,1%)

フタル酸ブチルベンジル(BBP)(0.1%)

フタル酸ジブチル(DBP)(0.1%)

フタル酸ジイソブチル(DIBP)(0.1%)

EU、中国、韓国、UAE、モルドバ12、ウズベキスタン13、ブラジル14 

 

また、規制で指定されている規制対象物質の典型的な適用除外例もいくつかあり、例えば、特定の照明機器における水銀の使用、一部の医療機器や監視および制御機器における鉛の使用などが挙げられます。

3.適合文書

ほとんどの規制では、規制対象物質に関する要件への適合について、製造者による自己宣言が求められています。EU RoHSの場合、適合性評価のための技術文書が必要であり、これは現地当局からの要請があった場合にのみ提出しなければなりません。中国、韓国、インドなど一部の国では、サプライヤーは特定の公的プラットフォームに登録し、適合性に関する自己宣言を提出・公開する必要があります。中国、ウズベキスタンでは、物質規制への適合を証明するために、自己宣言に加えて、RoHSの自主認証も選択肢の一つとなっています。

一部の国では、現地のRoHS規制は設けていないものの、特定の貿易メカニズムを通じて、自国市場に投入される製品がEU RoHSに準拠することを要求しています。オマーンは、2021年にWTO通知を通じて、電気通信機器および医療機器のEU RoHSへの準拠要件を公表しました15。イスラエルは「欧州規制トラック(European Regulations Track)」を発表しました。これにより、メーカーは、公式規格の対象となる製品であっても、EU RoHSを含む関連する欧州規制の要件に準拠していれば、その製品の輸入、製造、または販売が可能となります16

4.適合表示

RoHS宣言には通常、既存の製品安全適合スキームと同じマーク(EUのCEマーク、UAEのEQMマーク、台湾の商品マークなど)が使用されます。RoHSおよびWEEEの要件を同一の規制として採用している他の国々では、統一された表示が求められています。例えば、セルビアでは、バツ印付きの車輪付きゴミ箱マークを使用することが義務付けられています。

中国と日本では、RoHS表示が区別されています(物質規制への準拠を示す緑色の表示と、濃度制限値を超える規制対象物質が含まれていることを強調するオレンジ色の表示)。このことから、日本や中国ではRoHSの物質制限への準拠が義務付けられていないと思われるかもしれません。しかしこれは必ずしも正しいとは言えません。まず、規制対象物質の表示は必須であり、これにより消費者が環境に配慮した製品を選択しやすくなり、ひいては製造者が物質の濃度制限を遵守する動機付けとなります。さらに、製品が中国の「第二段階の適合性評価の対象製品リスト(達成管理目録製品の電器電子製品)」の対象となっている場合、物質制限要件への準拠が義務付けられており、そのため、追加の緑色の製品適合マーク(自己宣言(SdoC)または自主認証)を表示しなければなりません。

5.総括

欧州連合(EU)、EEA、およびEFTAの合計31カ国が、EUのRoHS指令の要件を国内法に取り入れています17。EUのRoHS要件は、世界市場参入を検討する際の各国RoHS規制に関する基準と見なすことができます。ただし、国ごとに、規制対象となる製品カテゴリーや、提出書類および情報開示の要件が異なる場合があります。また、米国のように、統一されたRoHS規制がまだ存在しない国では、物質の制限や報告義務を含む州レベルの要件に特に注意を払う必要があります。全体として、RoHSの管理は、対象製品の範囲拡大や規制対象物質の追加に伴い、ますます厳格化しています。ウズベキスタンやモルドバなど、RoHS規制の制定や改定を進めている国も増えています。製造者は、最新の規制改定情報を常に把握し、各国のRoHS要件に即した対応準備を整えることで、規制への適合を確保する必要があります。

参考資料

 

References

  1. UNEP (2020): Chemicals of Concern in Electronics - Review of Legislative and Regulatory Approaches, available at: https://wedocs.unep.org/rest/api/core/bitstreams/e71d6c79-25ec-4b30-9f41-ef21e51afc55/content

  2. Directive 2011/65/EU of the European Parliament and of the Council of 8 June 2011 on the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment, available at: https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32011L0065

  3. Directive 2012/19/EU of the European Parliament and of the Council of 4 July 2012 on waste electrical and electronic equipment (WEEE), available at: https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2012/19/2024-04-08

  4. Catalogue of Compliance for the Restriction of Hazardous Substances in Electrical and Electronic Products (First Batch), available at:https://www.miit.gov.cn/zwgk/zcwj/wjfb/gg/art/2020/art_23a6d1a1bad841439d30a95486d94ecc.html

  5. 5

  6. Enforcement Decree of the Act on the Resource Circulation of Electric and Electronic Products and Automobiles, available at:https://www.law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?lsiSeq=278595&ancYd=20251001&ancNo=35804&efYd=20251001&nwJoYnInfo=Y&efGubun=Y&chrClsCd=010202&ancYnChk=0#0000

  7. Technical Regulation on the Restriction of Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment, available at: https://eping.wto.org/en/Search?&viewData=G/TBT/N/SAU/1166/Corr.1/Add.1  

  8. UNEP (2020): Chemicals of Concern in Electronics - Review of Legislative and Regulatory Approaches, available at: https://wedocs.unep.org/rest/api/core/bitstreams/e71d6c79-25ec-4b30-9f41-ef21e51afc55/content

  9. GB 26572-2025: Requirements for restricted use of hazardous substances in electrical and electronic products, available at: https://openstd.samr.gov.cn/bzgk/gb/newGbInfo?hcno=279928A31DAA3737BD0205BD3A0A4857

  10. 10

  11. The draft Technical Regulation on the Restriction of Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment of Saudi Arabia proposed the expansion of restricted substances from six to ten. 

  12. Moldova approved the finalized Decision for the approval of the Technical Regulation on the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment in the Official Gazette No. 526-528 on Oct. 10, 2025, transposing Directive 2011/65/EU on RoHS. The regulation will come into force on Oct. 10, 2026.

  13. On Aug. 15, 2025, the Cabinet of Ministers of the Republic of Uzbekistan published Resolution No. 517 dated 15.08.2025 on approval of technical regulations on the restriction of the use of hazardous substances in electrical and radio electronic products (Uzbekistan RoHS), which will take effect on Feb. 17, 2026.

  14. On Aug. 11, 2025, Brazil National Council for the Environment published a consultation for the Resolution that establishes restrictions on the use of certain hazardous substances in electronics equipment marketed in the national territory.

  15. Ministerial decree obligating European directive 2011/65/EU "Restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment" and its amendment in 2015 and 2017, available at: https://eping.wto.org/en/Search/Index?freeText=oman%20ROHS&distributionDateFrom=2021-01-01&distributionDateTo=2021-11-30&viewData=G%2FTBT%2FN%2FOMN%2F442

  16. <p>Amendment on Standards Order (Fifth Addendum), including Adopted European Regulations, available at: <a href="https://www.chamber.org.il/foreigntrade/1109/1112/155229/">https://www…;

  17. <p>UNEP (2020): Chemicals of Concern in Electronics - Review of Legislative and Regulatory Approaches, available at: <a href="https://wedocs.unep.org/rest/api/core/bitstreams/e71d6c79-25ec-4b30-9f4…;

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